サッカー 守備戦術の教科書

2018/01/03

Jリーグ 松田浩 分析本





概要


 かつてヴィッセル神戸やアビスパ福岡、
そして栃木SCで指揮をとった松田浩氏が、
自身の代名詞でもある「ゾーンディフェンス」の基礎理論を、
栃木SC時代に用いたプレゼンや、
本書の発行前年に行われたブラジルW杯における日本代表の試合などを資料として解説し、
さらには、実際に自らが選手に施した実戦的なトレーニング方法まで紹介した1冊。



感想 


“素晴らしきゾーンディフェンスの世界”
への導きとなる1冊

 このブログを始める前から持っていた1冊。
攻撃に特長を見出そうとした日本代表がW杯で惨敗したこともあり、
攻撃的、特に細かなパスワークを用いたサッカーに対しての
アレルギー的な雰囲気が、
当時の日本サッカーにはあったような気がします。

そんな空気が流れる中で発行された本書ですが、

タイトル通り、
まさに教科書然とした内容。

「選手Aがこう動いたら、Bはココにこう動く。」

といった具合のレクチャーが一通りされたところで、
後半には実例(ブラジルW杯の日本など)を教材にして、解説。

合間に差し込まれる図の見やすさもあって、
大まかな理論は学べるかと思います。
(4-4-2で守る実際の試合の映像があれば、なお良し)


(思考を)混ぜるな危険

ただし、この本を読む上で一番大事なのは、


「ゾーンディフェンスと、
4-4-2というフォーメーションを
セットにして考えてはいけない」

ということではないかと思います。

本書の中で、理論を解説する際は一貫して、
フォーメーションは4-4-2とされていますし、
著者である松田氏はそれ自体が代名詞となるほどに、
4-4-2のゾーンで守る戦術を用いてきましたが、

松田氏は本書の中で
『スペースを埋める・奪うの概念』
を日本人にもっと広く普及させることが重要で、
そのために最も効果的な戦術が4-4-2のゾーンである。
と述べているのであって、

「ゾーンディフェンス=4-4-2」

とは述べていないことに注意が必要です。
つまり、

4-4-2で並んだからにはゾーンディフェンスをしなければいけないわけではないし、
逆に、ゾーンディフェンスは4-4-2でなければ出来ない

というわけでもありません。



あくまで“教科書”にすぎない


さらに、
「守備時にこういう概念を持って守れば、世界とも戦える」
とは書いてありますが、

「そこから最もスムーズに移行できる攻め方はこうだ!」
とか、
「カウンターなどでブロックが形成できていない、
スクランブル的な状況からの立て直し方はこうだ!」
といった、

“応用問題”の解決法は書いていない


点にも、注意が必要です。

それについて
この本を手に取った読者同士で、
あーでもないこーでもないと議論しあう楽しみ方も、
あるのではないでしょうか?

これからの日本サッカー界のスタンダードはどうあるべきか、
一般のファン層にも考えるきっかけを与えてくれる、
素敵な1冊です。



アルトコ! 


 この続きを、アルディージャに作り上げてほしい
 
多分、大宮アルディージャのファン・サポーターの大体は、
このチームのサッカースタイルの原点は何か、
と訊かれれば

「4-4-2のゾーンで守る、堅守速攻スタイル」

と答えるのではないでしょうか。

それは事実でしょうし、
実際に、僕もそう思います。

ですが、
これまでアルディージャの強みとして用いられた守り方は、
本書に記されたような、
いわば“教科書の域を出ない”やり方でしかなくて、


これまでのやり方を継続するだけでは、
いずれ通用しなくなるのではないか


という不安が、僕個人の中にあります。
そして、石井監督もまた、
就任会見のインタビューで、

アルディージャの守備スタイルの進化の必要性を説いています。

今までの大宮アルディージャの戦い方を見ていた方はご存知かと思いますが、ある程度自陣に引き込んで守ることはできていると思います。それをもっとアグレッシブに、自分たちからアクションを起こしてボールを奪いに行く形は、私も鹿島のときにやってきたので、このチームでも引き続きやっていきたいと思います
アルディージャ公式HP
「石井正忠監督 就任記者会見レポート」より引用



現代のサッカーは、フォーメーションやスタイルよりも、

いかにして、相手が意図しない形で攻撃を終わらせるか
いかにして、相手が守備の形を整えるまえに攻め切るか

によりフォーカスされてきています。

今までに多くのファン・サポーターに
守備で魅せてくれたアルディージャだからこそ、
この現代サッカーのトレンドに対応した、

“教科書の先にある守備”

を、開拓してほしい。

そのためにはまず、僕らファン・サポーターが
この本で基礎をきっちり押さえ、
見る目を養い、チームに対しての要求を上げることが、
ひとつ大事になってくるのではないでしょうか?


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