概要
サンフレッチェ広島やロアッソ熊本の元監督であり、
日本代表のコーチやFIFAインストラクターとしても活躍した小野剛氏
(2017年現在、FC今治育成コーチに就任)の著書。
FIFAインストラクターとして
各国の選手やクラブチームを分析してきた経験から、
『選手を多角的に分析、評価する』
サッカーの見方を紹介した1冊。
『サッカースカウティングレポート』の続編として位置付けられている。
感想
まず、章構成がとても良く出来ています。
はじめの章(Chapter1〜2)で、
「良い選手とは?」
という、ポジションに関係なく良い選手が共通して備えている能力や資質、理想像を提示した上で、
そこから(Chapter3〜4)はポジション別に特に必要なスキルなどを細かく解説。
そして、名選手の定義はサッカーのトレンドの変化とともに変わってきたことを過去の名選手を実例としてあげながら解説し(Chapter5)、
「では、名選手とはどんな環境から生み出されるのか?」
という指導、育成方針についての小野氏の持論が紹介される
(Chapter6)。
このように、
前の章で解説され、身につけた知識を元に、
そこへさらに肉付けをしていくという構成になっているため、
章の途中で説明が細かく枝分かれしたりと、
解説本に時折ある“読み疲れ”がなく、
ストレスフリーに読めるところがありがたいです。
内容的にはやはり、
Chapter3〜4の各ポジションごとに要求される能力の解説が面白く、
特にCBの項などは、
ひと昔前では考えられないほどに求められる能力が高くなっているのに驚きます。
もはやサッカーにおけるFWやGKといったポジション名は、
プレー開始時の便宜的な位置を表すためだけのものになってきているんじゃないか。
そう思わされるほど、各ポジションの選手の役割が多様化してきている現代サッカーを理解するためにも、
ぜひ読んでおきたい1冊ではないでしょうか。
アルトコ! 〜本当にSBは『ボランチの墓場』なのか?〜
アルディージャのSBは、一部では
『ボランチの墓場』
と揶揄されているとかされていないとか。
実際、現チームでボランチとSBの両方の経験がある選手は……
・大屋 翼
・和田 拓也
・茨田 陽生(※柏レイソル時代にSBを経験)
・岩上 祐三
確かに、ちょっと多いかも。
そして茨田選手以外は、元はボランチ起用を期待されて加入した選手でしたが、現在の主戦場はSBになっています。
こうした見方だけをすれば、
『ボランチの墓場』と言われるのもまぁわからなくもありません。
ですが、本書の
『各ポジションで求められる能力 SB編』
の項目を読むと、
「ボランチの経験があるから、
あるいは出来る能力があるからこそSBを任されている」
という違った見方もできます。
また、SBが主に担当することが多いスローインですが、
「スローインの巧拙で戦術的な能力、理解力の差がわかる」
と、とても興味深いことも本書では解説されています。
このように、現在のアルディージャのSB事情的には
なかなかに面白い本でもあるので、
ぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか。
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