【書籍紹介】サッカーは5で考える

2018/10/18

書籍紹介 北条聡


“ツマミ食い”のしすぎがかえってアダとなった印象があります。


概要


かつて『週刊サッカーマガジン』で編集長を務めた北条聡氏が、
「日本サッカーの進むべき道はいかなるものか」
を、過去にトレンドを興したクラブや代表チームの戦術やシステム、
そして現在のサッカー界に見られる傾向を取り上げることで探る一冊。

感想


主題はともかく副題はちょっと……

正直なところ、本書の内容に対してこのタイトルはどうかなぁ。
と、個人的には思ってしまいます。
実を言うと、昨今しきりに語られている
『5レーン理論』や『ポジショナルプレー』の理解を助ける一冊となることを求めていた僕は、
中身や概要を確認せずに本書を買ってしまい……。
その時点で9割僕の責任であるのは間違いないんですが、
それでもなんというか、上記のような内容を想起させるタイトルであるような気がしてなりません。
ただ、
「トレンドを追うばかりではなく、世界とは違うことを探ることも必要だ」と本書内で北条氏も説いていることから、
主題自体はあながち的外れでないと思います。
ピッチを3や4で区切っていた今までの“当たり前”から脱却した考え方ができた結果、
ジョゼップ・グアルディオラは現在サッカーにセンセーショナルを巻き起こせたわけですから。

ですが、そこに
「可変システムがわかれば試合が10倍面白くなる!」と、あたかもシステム論解説の本であるかのように副題をつけるのは
読み手に対してあまりにもアンフェアでは?
と思ってしまいます。
事実、五の目(ロンド)システムに言及した箇所はほぼありませんでしたから。

取り上げ方がちょっと雑多では……?

また、当初の目論見から外れたことを、北條氏もあとがきで認めていますが、
「世界各国の特色を取り上げることで、日本にしかない良さ、目指すべき方向を炙り出そう」という意図があったのだろう、というのは随所から読み取れます。
ですが、
取り上げた話題が多すぎるのではないかと思えてしまうほど個々の内容が薄く、そこに不満を覚えます。

薄さを感じる理由としては、
クラブや国がその戦術、システムを採用したことに対する
“何故?”の掘り下げ不足しているからではないかと思います。

そもそも日本と似たような事情や背景を持つ国やクラブの“何故?”
を見つけることができれば、これだけ多くの題材を取り上げる必要もなかったのではないか、と思います。

もともと、一般人では手に入れづらい大量の情報を収集し、
万人にわかりやすくまとめて伝える編集部の長を務めていた北條氏であれば、
そういったアプローチで僕らにひとつの道を提示できたのではないか?
と思えてなりません。

次回作はいっそ、“決めつけ”本を出してほしい

とはいえ、北條氏には氏なりに、
「日本のサッカーってこれだと思う」というそこそこ強い確信があるのでは?と、本書の第五章『日本論』を読んでいると思わせられます。
この章だけは、それまでに比べて圧倒的に具体的でしたし、
文章から感じる熱量も高かったです。

読み物の面白さは、

書内の主張や論説が正しいかどうかよりも、
著者の意思・確信がどれだけ強いかで決まる。

と、僕は思っています。
ですから北條氏の次回作は、
自説を一方的に肯定・補強した根拠ばかりを集めまくった

究極のオレ様絶対本

的なものを、個人的には期待しています。
絶対面白くなると、“強く確信”しています 笑

こちらもオススメ

本書で北條氏が目指したように、
「未来を探るために過去をもっと知りたい!」という方へ、
以下、オススメです。

1.Jリーグの戦術はガラパゴスかこちらも掘り下げが充分とは言い難いかもしれませんが、
それでもJリーグで覇権をとった戦術をここまで集めた本もそれほど多くはないので、そこに価値ありです。

2.戦術の教科書 サッカーの進化を読み解く思想史過去と現在の紐付け方がとても上手く、歴史書としてはかなりの傑作ではないかと思います。個人的にかなりオススメです。

ブログ アーカイブ

このブログを検索

QooQ