【書籍紹介】モダンサッカーの教科書 - イタリア新世代コーチが教える未来のサッカー

2019/03/09

解説本 書籍紹介 片野道郎

表紙デザイン

未来図を教示するという意味ではそうかもなんですが、
教科書というよりは、哲学書?


【概要】

イタリア在住のジャーナリストである片野道郎氏。
その彼が最も注目している、
いわく『ミハイロビッチの右腕』、
いわく『随一のペップ・マニア』であるレナート・バルディ氏と、
欧州フットボール界における戦術、トレーニング、
果てはチーム組織までも含めた最先端事情を
“インタビュー形式”で語り、綴った著作。

【感想】

インタビューでも変わらない、丁寧な取材と構成

今日までに読んだ
『セットプレー最先端理論』『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』
でも感じたことですが、
片野氏の著書の魅力はなんといっても、
“一冊の本を書き綴るために膨大かつ緻密な裏取り取材や資料収集を行っている”ことです。
そのため、著書内で展開される持論の説得力があり、
取り上げられる過去の事象や事件の整合性なども非常にしっかりしているので、
そのあたりにストレスを感じず読めることは、いち読者として大変ありがたいです。

そしてそれは、インタビュー形式という一風変わった本書でも変わることなく、
ひとつのトピックに対して掘り下げてほしいことや、
読み進めていくうちに、
「それは分かったけれど、じゃあそれでいくとアレはどうなの?」
と浮かぶたいていの疑問についてもきちんとバルディ氏に訊いてくれています。
※例えばジョゼップ・グアルディオラ氏(ペップ)の有名な戦術である
『偽サイドバック』において、
「そもそもなんでサイドバックが中央に行く必要があるの?」
など。

“教科書”と呼ぶには「?」が浮かぶ

ただし、本書はタイトルに『教科書』とついてはいますが、
インタビューの相手が大のペップ・マニアであるバルディ氏であるためか、
第1章を丸ごとペップの戦術や思想(果ては人柄にまで笑)の解剖や理解に割いた、ある一派の視点からの語り口となっているため、
必ずしもフットボール界の情勢や動向を正確に捉えているとは言えません
(一冊でそれをやろうとしたら難しいですしね)。
また、これもまた僕が個人的に好きじゃない、
いわゆる“帯の煽り文で内容を誤認させる”ようなやり方が本書でも見受けられます。

「最先端の戦術トレンドに興味を持たず
鎖国化する日本のままなら未来はない」

という、なんともセンシティブな帯文が本書には巻かれています。
確かに、メインに据えられているのは戦術周りの話題ですが、
本書はもっと広く、包括的に欧州のサッカー事情を取り上げています。
(要するに、帯文より濃くて良い内容だと言いたいんです)
ですから、最先端の戦術を勉強したい!といった目的で
購入した方は、やや肩すかしを食らってしまうかもしれません。

というか、後述とてつもない魅力ポイントが僕の中では大きすぎて、
教科書というよりは哲学書だ
という風に思えて仕方がないんですよね。

それだけで購入必至の、“ある一文”

その魅力ポイントですが、それは、

結局この本は“買い”なの?」と訊かれたとしたら
買って絶対に損しないですよ」と言い切れるに充分な一文が、
本書にはある。

これに尽きます。
詳細は是非ご購入いただいて読んでほしいので伏せますが、
要するに、
“まずはフットボールに対して哲学を持とうよ”
ということだそうです。
これは本当に奮えました。
つまるところ、やっぱりまずはそこなのかな、と思わされました。


僕のようにオレンジのチームが大好きなみなさんへ。
これなら勝てるだろ!」と思っているそのサッカーと、
こう勝ってほしい!」と心の底から思っているサッカー。
果たしてそれらは一致していますでしょうか?

本書と向き合ってみて、一度再確認してみてはいかがでしょうか。

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